超音速旅客機復活? 〜ユナイテッド航空が購入 : 東京-サンフランシスコ 6時間〜

コロナ禍で移動機会がどんどん減少するトレンドの中、2021年6月3日ユナイテッド航空が驚きのニュースを発表しました。航空ベンチャーであるBoom Supersonic社との間で超音速旅客機15機の購入契約を締結したということです。音速(約1,200km/h)より速い速度で移動する超音速旅客機は実は過去にも商用運行されていました。コンコルドという機種でエールフランスによるニューヨークーパリ路線、ブリティッシュエアウェイズによるニューヨークーロンドン路線でしたので日本人にとっては馴染みはないかもしれません。

2000年にシャルル・ド・ゴールからの離陸に失敗し、搭乗者全員109名と墜落現場付近の4名の死亡事故は大々的に報道されたため、そのニュースを記憶されている方もいるかもしれません。その事故に加えて、2001年のニューヨークの同時多発テロによるニューヨークへの渡航者減少により、もともと商業的にうまくいなかった超音速旅客機の運行停止の決断が下されました。

これは2010年にシャルル・ド・ゴールの傍に展示されていたエールフランスのコンコルドです。翼の形が特徴的で流線型でかっこいいです。

そんな超音速旅客機が近い将来新たなメーカーによりカムバックするということで楽しみにしたいところです。

MRJのように、延期による延期で最後にはプロジェクト中断にならないよう進めて欲しいところですね。MRJももう飛ぶところまで来ているわけですし、需要もそれなりにあるのであれば復活も検討して欲しいところです。

ニュースの内容

今回のニュースは2021年6月3日に、ユナイテッド航空、ブームスーパーソニック社双方から発表されています。

両者の契約内容は、ユナイテッド航空がブームスーパーソニック社の機体Overture 15機を購入するのに加え、今後ユナイテッドの要求する安全性、運行性、サステナビリティ要件を満たした場合には35機の追加オプションを含み、協力して2025年にロールアウト、2026年に初飛行、2029年に商用飛行を目指すということです。環境面では、音の問題に対して言及はありませんが、100%持続可能な航空燃料を使う初めての旅客機になるという点は時代に即しているとも言えます。楽しみですね。


(Boom Supersonic社webサイトより)

超音速旅客機の課題

超音速飛行においては亜音速に比べて決定的かつ致命的な問題がありそれによりコンコルドなどは飛行区域も限られ本領を発揮できずに継続断念につながっています。再挑戦として過去の問題をどうしているのかは気になるところです。

ソニックブーム(Sonic boom)

今回のニュース当事者の「ブーム・スーパーソニック」と似ていますが一般名詞です。超音速飛行では、周囲に轟くような衝撃波を生み、それを指すネガティブな言葉です。音源が音速よりも速い速度で移動すると、そこで発生した音が拡散するよりも先に音源が進むため、音が凝集され、凝集された音が地上に届く際には短時間の非常に大きな音(衝撃音)を発生させます。雷鳴の原理もこれです。

言葉で説明すると難しいですが、例えば、亜音速の航空機が通過することを考えると、飛行機が近づいてくるにつれ飛行機の到着よりも前にゴゴゴゴという航空機のエンジン音が先に到着し、航空機の進行につれ音が徐々に大きくなり、通過した直後くらいがピーク、そこから先は徐々に小さくなっていきます。

ところが超音速で進む航空機となると、遠くにいるときの音が届くよりも旅客機の進行が早く、何も音がしない状態で旅客機が通過し、あるタイミングでそれまで発されていた音全てが同時に届きます。その凝集された音はかなりのエネルギーとなり時にガラスが割るほどの衝撃になります。そうした物理的な被害がなかったとしても、雷鳴のような轟音は、人にとっても他の動物などにとっても非常に不快で強い環境負荷になります。

かつてのコンコルドは、このソニックブームが問題となり、領空内での運行を禁止する国が続出、結果的に陸上で定常的に運行できず、大西洋上空の限られた場所でのみ超音速運行としていたため高速運行の効果が限定的でした。海上運行としても海面近くにいた魚などが気絶するといった影響があったとも言われています。

このソニックブームの問題をどう解決しているのかは気になるところです。

機体の快適性

高速になればなるほど空気抵抗は大きくなり高速運行の邪魔になります。その空気抵抗を抑えるためには、空気の薄い上空を運行することに加え、できるだけ進行方向からみた断面積を小さく、つまり胴体を細くする必要があります(翼幅も短めにしています)。

コンコルドは全長は60m強とBoeing 787−900と同等のサイズでありながら、胴体幅は2.88m(787−900は5.5m)で、これは今現在のBoeing 737やAirbus 320といったナローボディー機よりもさらに細く、短距離のリージョナルジェットのエンブラエルE-Jetなどとほぼ同等です。そうした胴体幅から、コンコルドでは全席ファーストクラスの設定だったにも関わらず、エコノミーとほぼ同等のシートで2−2の配列だったということです。

また、超音速での運行は空気との摩擦熱で機体表面はかなりの高温になり、素材の熱膨張による隙間を防ぐために窓も大きく取れずコンコルドではハガキサイズだったようです。

この辺りもどうなっているのか気になるところです。

ブームスーパーソニック社開発機 Overture

CGですが外見で見るとやはり空気抵抗を抑えるためにかなり細身の機体です。翼もコンコルドを踏襲した形状で、ある程度面積は維持しつつも翼長を押さえたスタイルです。理論からしたらここはあまり変えようがないところかもしれません。


(Boom Supersonic社webサイトより)

巡航速度はマッハ1.7(大体時速2,100km)でBoeing 787の巡航速度のちょうど2倍といったところです。離発着、高速運行できない区間もありますので単純に半分にはなりませんが、それでもフライト時間はかなりの短縮が期待できそうです。

ルート、想定時間は以下のようになっています。東京からだと香港に行く位の時間でシアトルに行けるようになるということです・・・

(携帯の場合:スクロールしますーーー>)

From To 想定時間 現状
東京 サンフランシスコ 6:00 h 10:15 h
東京 シアトル 4:30 h 8:30 h
ニューヨーク ロンドン 3:30 h 6:30 h
ニューヨーク フランクフルト 4:00 h 7:00 h
パリ モントリオール 3:45 h 7:15 h
パリ ワシントンDC 4:00 h 7:00 h
ロサンゼルス ソウル 7:00 h 12:45 h

同じくブームスーパーソニック社のWebサイトで活用想定ルートのイメージらしきものを見つけましたが、やはり陸地を避けたルートを想定しているようです。やっぱりソニックブームの問題は抜本的に解決できなかった感じですかね。超音速の問題自体は理論上どうしようもないので、やれることとしたらできるだけ地上に届くまでに出来るだけ減衰させるように運行高度を上げるか、発生する音自体を小さくすること位でしょうからね・・・

これから分かるのは陸地を飛ぶ日本 ⇔ ヨーロッパへの適用は難しそうです。そして陸地を通るルートとしては勝手にイラク、シリア上空を通る路線をイメージしているようですが、アメリカと仲が悪い国としても流石にひどいのでは???

やっぱり活用領域は、太平洋横断路線、大西洋横断路線が現実的でしょうね。


(Boom Supersonic社webサイトより)

シート

インテリアもイメージということですが、今現在は全てビジネスクラスの設定で1−1のシート配列で考えているようです。価格も頑張ればなんとか手が届く現状の「ビジネスクラス」位の価格帯にしてくれるとありがたいです。機体幅は狭いですが、1−1の配列でコンコルドに比べるとかなり快適そうです。窓もかなり大き目にとられておりこの辺は50年の技術の進化が見られるところかと思います。


(Boom Supersonic社webサイトより)

シートピッチは十分ではありますが、フルフラットにはならない感じです。国内線プレミアムクラスといった感じですかね。これは大陸間のフライトでも4時間程度から長くても6時間程度まで短縮できるということで、機内で寝るという利用シーンは考えなくてよいということでしょう。それはそれでちょっと寂しい気もしますが、前述の通り全ての路線を置き換え可能なわけでもないのでスタイルに合わせて選択する形になるのでしょう。

このイメージではシートピッチは窓1つ分位ですが外観のイメージ図で窓の数を数えると27です。1−1の配列だと54席程度しか取れませんが、スペック上は65〜88席とされており、実際はこれより狭いシートピッチ設定となりそうです。


(Boom Supersonic社webサイトより)

もしくは、1−2の配列などもありうる感じでしょうか。正面からのイメージですが、この通路の広さは無駄ですので1−2が現実的な感じですかね。


(Boom Supersonic社webサイトより)

眺め

空気抵抗を抑えるため超高速運行時は高度50,000フィート(18km)を飛ぶということで視界はこんな感じになるということです。現状の航空機は33,000フィート(10km)位ですので、かなりの高高度を飛ぶ感じになります。半分宇宙ですね、地球の丸みを感じられるということで楽しみです。注意点は翼が機体後方になるにつれ幅広になる構造ですので、窓の外を見たい方は機体前方を座席指定しましょう。


(Boom Supersonic社webサイトより)

次の採用航空会社は日本航空?

そして、ブームスーパーソニック社のWebサイトを見ていたらこんなイメージを見つけました。


(Boom Supersonic社webサイトより)

日本航空は、ブームスーパーソニック社のかなり初期から資本提携を行なっているようです。同社は、また、最終的にキャンセルになりましたが、コンコルドの時も仮発注していた経緯があります。昔から超音速旅客機に興味があることが見受けられます。Airbus 380を3機導入して大量輸送に活路を見出そうとしているANAに対して、移動時間の短さで勝負しようとしている感じでしょうか。

まとめ

航空ベンチャーがいろいろ存在するのは朧げながらに知っていましたが、具体的な購入契約、商用運行までの道筋が立てられるほどの段階まできているとは思っていませんでいた。

そして、調べてみるとデザイン上の概観設計、飛行できる領域は、コンコルド当時とそれほど違いはなさそうですが、内装や窓の大きさなどは進化しており、近未来でワクワクするデザインです。海外旅行好きの私たち、特にフライトにも一定の楽しみを置いていることもあり、そんな超音速旅客機には一度乗ってみてみたい感じです。まあ、その、、、時間短縮の価値がどれだけあるか?という点は見出せませんが。。。

そしてこのベンチャーには日本航空も出資しているということで次は日本航空からのアナウンスも期待したいところです。

この機体は、Overture(序曲)ということですので、続章がどうなるのかも非常に楽しみです。

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